私が初めて車を購入したのは28歳のとき、
それまでは父の車を乗り回していた。
もともと父は外出好きではなく、
家にいること多かったので不都合がなかった。
そんな私が車を購入しようと決断したのは、
アルバイトをするため。
その頃の私はアルバイトに燃えていた。
お金が欲しいっていうこともあるが、
新しい環境で、
新しい職種で、
新しい人間関係をつくる楽しさに目覚めていて、
短期のアルバイトを色々としていた。
そんな私が次にしようとしていたのが、
家から車で30分ほどのところにある、
工場での「和菓子の製造」。
繁忙期の5日間で、時給750円。
それが1週間後から始まる。
交通の便が悪いところなので、
乗用車以外には考えられない。
いくら父が家にいることが多いといっても、
5日間、
日中車を借りっぱなしっていうのは、
無理な話。
=車購入。
近所の家族経営でしている車屋さんは、
外に中古車を数台並べているが、
その中にその車はあった。
白のダイハツ「ムーヴ」。
特別仕様車で、
後部座席上にはカロッツェリアのスピーカーが付いている。
そして新古車で、
走行距離は2km。
その場で即決!
納品はバイト開始日の前日。
かなり急なお願いも快く引き受けてくれて、
「ムーヴ」は私のパートナーとなった。
かなり安易に決めたようでいて、
でも、
かなり気に入っていた。
苦手な急な坂道を上るときは、
高いエンジン音に合わせて、
「頑張れ、頑張れ!」と声をかけた。
一人の時から常に一緒。
そして結婚して、
2人の子供たちが増えて、
小さな車体に4人乗っても、
高音を響かせて坂道を上ってくれた。
「頑張れ、頑張れ!」の声も4人分。
老体にムチ打って、
私のために頑張ってくれたけど、
あちこち体にガタがきて、
引退することに。
そんなムーヴとお別れして3年。
最後に一緒に撮った写真を見て、
懐かしさに胸が詰まる。